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データ分析法・第3回「t検定と効果量」

データ分析法学習

授業情報

項目内容
科目データ分析法
回数第3回
テーマt検定と効果量(Cohen's d・Hedges' g)
日付(未記入)

1. t検定の復習

t検定は2つの平均値の間に統計的に意味のある差があるかを検定する手法。対応のあるt検定と対応のないt検定に分けられる。

例題①:新薬の効果(ttest6.csv、対応なし)

ラット20匹を新薬群(A、n=10)と偽薬統制群(B、n=10)に分け、反応潜時(秒)を比較。平均はA=53.2、B=57.8。

x <- read.csv("ttest6.csv")   # 列名: A, B
t.test(x$A, x$B)              # ウェルチ検定

結果:t値2.482、自由度14.865、有意確率0.026 → 5%水準で有意差あり

例題②:新薬の効果(ttest1.csv、対応なし)

同じ実験設計だが別のデータ。平均はEXP=53.2、PC=57.8(例題①と同じ値)。

x <- read.csv("ttest1.csv")   # 列名: EXP, PC
t.test(x$EXP, x$PC)

結果:t値1.385、自由度17.534、有意確率0.184 → 5%水準で有意差なし

t検定結果の見方

出力結果のt値自由度(df)・**有意確率(p-value)**の3点を確認する。

  • p-value ≦ 0.05 → 統計的に有意な差があったと判断
  • p-value > 0.05 → 有意な差は認められなかったと判断

2. 有意確率の問題点

例題①と②は各群の平均値は同じなのに、有意確率は異なる結果となった(標本のバラツキの違いによる)。

  • 標本の大きさや分散によって有意になったりならなかったりするため、有意確率は差の量的な大きさを表す訯ではない

有意確率 ≠ 平均値の差の大きさ


3. 効果量(effect size; ES)とは

有意差検定は「差があるかないか」の基準であり、差の大きさの基準ではない。最近は有意確率だけでなく、差の大きさを示す指標である効果量も並記することが推奨されている。

t検定の代表的な効果量:Cohen's dHedges' g。いずれも「(平均値の差)(標準偏差)」で、効果(平均値の差)が標準偏差の何倍かを示す。

3-1. 対応のないt検定の場合

(1) 標本の大きさが等しい場合(基本式)

d=m1m2(sd12+sd22)/2d = \frac{m_1 - m_2}{\sqrt{(sd_1^2+sd_2^2)/2}}

(2) t値から求める場合(等分散を仮定したt検定のt値を使用、ウェルチ検定のt値ではない点に注意)

d=t1n1+1n2d = t\sqrt{\frac{1}{n_1}+\frac{1}{n_2}}

(3) 標本の大きさが異なる場合

d=m1m2spooled,spooled=(n11)sd12+(n21)sd22n1+n22d = \frac{m_1 - m_2}{s_{pooled}}, \quad s_{pooled}=\sqrt{\frac{(n_1-1)sd_1^2+(n_2-1)sd_2^2}{n_1+n_2-2}}

((1)式は標本の大きさが等しい場合の(3)式の簡略形)

(4) Hedges' g(バイアス修正式、dunbiased)

g=d×(134(n1+n22)1)g = d \times \left(1 - \frac{3}{4(n_1+n_2-2)-1}\right)

※文献によって計算式が異なる。本資料は Nakagawa & Cuthill (2007) に基づく。

3-2. 対応のあるt検定の場合

対応するデータ間の相関関係を考慮する必要がある。

(6) 基本式(rを考慮しない)

d=tpairednd = \frac{t_{paired}}{\sqrt{n}}

(5) 相関係数 r で修正した式

d=tpaired2(1r)nd = t_{paired}\sqrt{\frac{2(1-r)}{n}}

  • tpairedt_{paired}:対応のあるt検定で得られたt値、r:対応するデータ間の相関係数
  • (5)式と(6)式は結果が一致しない点に注意

4. Rパッケージの導入(compute.es

  1. メニュー「パッケージ」→「パッケージのインストール」を選択
  2. ミラーサイトを選択(どこでも問題ない)
  3. 一覚から compute.es を選択して「OK」
  4. 確認ダイアログで「はい」をクリックしてインストール完了

⚠️ 一度インストールしたパッケージは再インストール不要。ただし使用するたびに library() で読み込む必要がある。

library(compute.es)             # パッケージの読み込み
find.package("compute.es")      # 保存先の確認(library前に有効)
path.package("compute.es")      # 保存先の確認(library後に有効)

5. 効果量の計算(mes関数)

5-1. 対応のないt検定の場合(例題①)

library(compute.es)
mes(53.2, 57.8, 3.048, 5.007, 10, 10)   # mes(m1, m2, sd1, sd2, n1, n2)
  • m1, m2:各群の平均値、sd1, sd2:各群の標準偏差、n1, n2:各群のデータ数
  • 出力結果から dg(絶対値で判断)を確認:d = 1.110, g = 1.063
  • 表示桁数を増やす場合はオプション dig=桁数 を付加
mes(53.2, 57.8, 3.048, 5.007, 10, 10, dig=3)

5-2. 対応のあるt検定の場合(前回の例題②、ttest3.csv)

前回(第2回)の対応ありt検定:t値3.902、自由度11、n=12。(6)式で計算すると:

3.902 / sqrt(12)   # (6)式: d = t_paired / sqrt(n)

d = 1.126


6. 効果量の解釈の目安

Cohen (1992):0.2 = 小(small)、0.5 = 中(medium)、0.8 = 大(Large)

Sawilowsky (2009) による追加基準:0.01(very small)、1.20(very large)、2.0(huge)


7. 練習問題(授業内)

練習問題①:例題①・②の効果量

効果量(d)効果量(g)
例題①1.1101.063
例題②0.6190.593

練習問題②:果物の糖度比較(ttest4.csv、対応なし)

t値自由度(df)有意確率効果量(d)効果量(g)
1.12117.0320.2780.5010.480

練習問題③:年平均気温の比較(ttest5.csv、対応あり,(6)式使用)

t値自由度(df)有意確率効果量(d)
3.41790.0081.081

8. 復習用例題集(解答付き)

問題内容(データ)検定方法効果量(d)効果量(g)
係留効果(アンカーリング)実験の追試(tr1.csv)対応なし2.3912.329
触覚2点弁別閾実験(tr2.csv)対応なし2.4932.418
プロ野球選手の左右打席別打率(tr3.csv)対応あり((6)式)0.645
触覚2点弁別閾、同一人が両条件を経験(tr4.csv)対応あり((6)式)2.867

(①②はna.rm=Tで欠損値を除外して計算、例:mean(x$p65, na.rm=T)


9. 参考:WebClass小テスト(第3回)

問題効果量(d)効果量(g)
① 20代・30代女性の購入金額比較0.1620.158
② A社・B社飲料水の味の好み比較0.7360.713

10. 参考:1要因分散分析の効果量(補足)

※「データ分析法」では分散分析を扱わないため、「応用統計」の内容を元に参考情報として記載。

対応のない1要因分散分析の代表的な効果量:η²(イータ二乗)

η2=SS要因SS全体\eta^2 = \frac{SS_{\text{要因}}}{SS_{\text{全体}}}

効果量の2分類

意味
d族差の大きさを表すt検定のd・g、分散分析のη²
r族関係の強さを表す相関係数・連関係数・決定係数

まとめ

  • 有意確率 ≠ 差の大きさ:標本サイズや分散に左右されるため、有意差検定だけでは差の大きさは分からない
  • Cohen's d / Hedges' g:(平均値の差)/(標準偏差)で表す効果量。gはdのバイアス修正版
  • 対応のある場合は相関係数rを考慮するかどうかで(5)式・(6)式が分かれる
  • Rでの計算library(compute.es)mes(m1, m2, sd1, sd2, n1, n2)
  • 解釈の目安:0.2=小、0.5=中、0.8=大(Cohen, 1992)